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様式の8要素

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グリッド拘束率

グリッドこうそくりつ

レイアウトを始める時にはまずレイアウト用紙をつくる。レイアウト用紙には本文(ほんもん)を基準にして様々なガイドラインが引かれている。このガイドラインをどのように扱うかによって、「グリッド拘束率」と「版面率(はんめんりつ)」による様式が決まる。

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グリッド拘束率——自由度

レイアウト作業で写真やタイトルの位置を決める時には、レイアウト用紙上のグリッド線に沿うのが原則。こうしてレイアウトされた誌面は、グリッドに拘束されたレイアウトである。一方、このグリッド線を無視して自由に配置しても構わない。そうすると、グリッド拘束から離れたレイアウトになる。

拘束すると理知的に、はずすと自由に

レイアウト作業で写真やタイトルの位置を決める時には、レイアウト用紙上のグリッド線に沿うのが原則。こうしてレイアウトされた誌面は、グリッドに拘束されたレイアウトである。一方、このグリッド線を無視して自由に配置しても構わない。そうすると、グリッド拘束から離れたレイアウトになる。

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グリッドを守ると理性的に

レイアウト用紙上のグリッドに沿ってレイアウトすると、がっちりとした四角形が中心になり、落ち着いた印象になる。理性的で、男性的な感じが強まる。グリッドを離れると自由気ままな感じになり、楽しい誌面をつくりやすい。

バランスが難しいグリッドフリー

グリッドの拘束から離れた自由なレイアウトは、グリッドという手がかりがなくなるのでバランスをとるのが難しくなる。訓練を積んだバランス感覚にすぐれたデザイナーでないと、下品な感じになりやすいので要注意。

グリッド拘束型

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グリッドがしっかりしているので、すっきりとして読みやすい。しかし、男性向けの経済誌に近い印象になりすぎるので、女性向け情報誌としては少し崩した方がよい

[料理の基礎完全マスター] (改作)

グリッド自由型

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形に沿って切り抜いた写真を多用し、グリッドフリーのレイアウト様式になった。女性誌らしい表情になっている (改作)

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グリッドを生かし、理知的でユーモラスな印象に [雑貨の本]

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グリッドフリーでのびのび自由 [雑貨カタログ]

グリッドをはずすと活気が出る

広報紙はどうしても堅く無難なレイアウトになりがち。グリッドを少しだけ崩せば、楽しさが増してくる。これに合わせて文字や写真のジャンプ率も上げて元気な紙面をつくってみよう。

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グリッドを守るでもなく、積極的に崩すでもなく、あいまいな状態でグリッドに拘束されている。おとなしい紙面なので読者に何を訴えたいのかがはっきりしない

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グリッドの拘束を少しだけはずしてみると、紙面全体に動きが出てきた。この雰囲気に合わせて、文字と写真のジャンプ率も上げて元気な紙面にした(改作)

グリッド拘束で各々の写真が独立する

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作品としての写真をレイアウトする時は、グリッドに拘束された方がふさわしい。各写真の独立性が強くなる [太陽]

グリッド拘束で各々の写真が独立する

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料理の記事はグリッドをはずした方が似つかわしい。大きな写真を楽しみながら全体が見え、次に小さな文字の説明文を読んでいく。各々の写真や文章などの全体が融合し合い、一体化する [レタスクラブ]

グリッドの拘束効果——格調、荘重さのある誌面はグリッドを守る

下図の2例を比較して、グリッド拘束率の重要さを十分に理解しよう。グリッド拘束性を崩し視覚度の強い写真を加えると、右ページの図とはまったく違ったレイアウト様式になってしまう。このようにミスマッチな様式のままではキャッチコピーをどのように工夫しても、文字組みの大きさや位置をどのように工夫しても、厳粛で静かなイメージを伝えることは難しい。

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もちろん本物の広告は右側の図。グリッド性を生かして余白を多くとり、太めの文字を配置すると、静粛で、荘重な印象が強まる。人物が自由に動き回る視覚度の高い左図のような絵柄は、上等なウイスキーの表現には似合わない

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厳粛な伝統行事にグリッド自由型は似合わない(改作)

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グリッド拘束型にすると厳粛さが表現できた。伝統行事を紹介する目的にふさわしい [家庭画報]

切り抜き版はグリッドを崩す

写真の切り取り方によって、下図のような様々な型ができ上がる。 角型の版を使うのが、角版(かくはん)で、切り抜き版とはモチーフの形に沿って形を切り抜くので、その名称がある。グリッド拘束の強いレイアウトとは、角版を多用することであり、反対に切り抜き版を多用すると、グリッドフリーの表現になる。

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角版

一方の断ち落とし版

ボケ版

切り抜き版

角版と切り抜き版の効果的な使い分け

角版はグリッド拘束型であり、切り抜き版は自由型だ。両型を組み合わせることにより、様々な対比効果が生まれる。

角版で全体を安定させる

切り抜き版だけで構成した右ページに対し、左は一転して大きな2枚の角版を置いている。この落ち着き感のために、右ページの動きが生きてくる。

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[雑貨の本]

切り抜き版をアクセントに

角版の中にひとつだけ小さな切り抜き版をはさむ。この小さな対比効果によって、誌面全体がほっとした気分に変わる。

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[雑貨の本]

小さな角版で引き締める

主役の人物たちは切り抜き版で表し、その間に角版の小さな写真をはさんで引き締める。切り抜き版の自由な曲線が生きてくる。

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[MORE]

VIPは切り抜き版にできない

特別な意味を持った人物は、切り抜き表現にふさわしくない。角版、断ち落とし版、ボケ版のいずれかがよい。切り抜き版の持っている自由さの印象が、存在感の軽さに通じてしまうのだ。

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[朝日新聞]

本記事は1998年発行の「レイアウト基礎講座」(著:内田広由紀 発行:視覚デザイン研究所)を底本として再編集し掲載しました。「レイアウト基礎講座」では多くの優れたレイアウト作品、新聞広告から名刺、求人チラシまで広く紹介しています。これらの作品によってレイアウトの仕組みがよく理解できたと思います。あらためて、制作関係者の皆様に感謝申し上げます。

以下に雑誌のリストを掲載させていただきます。情報は書籍発行当時のものです。

リストの見方

雑誌名 出版社名 出版年月 編集人 底本の掲載ページ-雑誌の掲載ページ

レ:レイアウト AD:アートディレクター CD:クリエイティブディレクター D:デザイナー AA:アートアソシエイツ DA:デザインアソシエイツ P:写真家 I:イラストレーター

家庭画報 (株)世界文化社 1996年1月 加治陽 55-52(レ:志村和信 P:鈴木一彦)

料理の基礎完全マスター(H2O特別編集) 日本放送出版協会 1996年5月 細谷一郎 I:朝倉めぐみ てづかあけみ DTPディレクション+デザイン:TOPPAN DTPスタジオTANC 50-98

MORE (株)集英社 1997年8月 館孝太郎 AD:古川正俊 本文レ:小島由記子 志野原学 渡辺朋子 坂井美穂 山下知子 村田敦子 渡辺貴志 57-58(P:神尾典行 坂部真弘 高井知哉 高田里絵子 根本勝利 古畑智子 山下みどり 岡安秀夫)

雑貨の本(きれいになりたい特別編集) (株)オレンジページ 1998年7月 前田クイン洋子 AD:西川一男 レ:西川一男デザイン室 49-136(P:吉沢康夫)、51-112( P:宇戸浩二)、56-50(P:吉沢康夫)、57-118(P:宇戸浩二)

クロワッサン (株)マガジンハウス 1998年7月 竹内正明 AD:(株)アレフ・ゼロ(小林美子) D:(株)アレフ・ゼロ(那須彩子 赤治絵里 菅家成子 山本真弓) 49-140(P:堀内成哲)

レタスクラブ (株)SSコミュニケーションズ 1998年7月 中谷充 AD:杉本幸夫(BRC総研) レ:小林さわ子 小村るみ 高橋克弥 水野奈緒子ほか 53-14( P:飯田信雄 I:杉本ゆうこ)

雑貨カタログ (株)主婦の友社 1996年11月 石神真紀子 AD:荘司邦昭 D:荘司邦昭 家原恵子 石澤仁美 遠矢良一 51-30 (P:千葉充)

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